涯 底そこひ =足利直冬=



     この筋目は恥隠はじかくることなどなくに
     むま 初陣へ――


     幾多返あまたかへ幾十度いくそたびも夢を結んだ
     天下に泰平を――
     打返うちかへ返々かへすがへすも身柄を奮い立たせた
     行手ゆくてがあるがに


     心肝しんかんげば 心にむと思い見た
     然言さはいえ 一顧だに許されなかった

    
     臨むがかたきなら
     焼き滅ぼさむあまの火もがもと案定あんじさだむ
     しかれども対するは君が心
     これはきざみ 如何すべからむ
     

     幾十いくそ袖のしがらみを拵えれば過ぐだろうか
     その前にしおで目が凝るか


     己をたばかることに労々じていた
     かかれば口上など出来ようもなかった
     るは
     ただ、・・・・・・認められたかった


     しからば 己が、あたふは――
     一期かけて、恨み発つ。まで・・・・


     さだあはひ
     ゆくりかにそぼたる頬
     あぁ これはそぞろ涙
     そう、・・・・・・故由ゆゑなどないのだ



--------------------------------------------------------------------------------  足利直冬⇒足利尊氏